任天堂には、社員だけが閲覧することができる社内ポータルサイトがあります。このポータルは、社員が社内の情報にアクセスする際の入り口になっており、全社員が一日一度は訪れるような重要なサイトです。ポータルでは、社内に共有すべき情報である「お知らせ」が随時投稿されるほか、帰宅・外出するときに役立つような「雨雲レーダー」をチェックできたり、任天堂がお客様に発信している情報を把握してもらうために「任天堂公式ツイッター」の画面を表示させたり、さまざまなコンテンツが閲覧できるようになっています。
また、たとえば、新しい備品を購入するときには、申請書を提出する必要があります。任天堂では、多くの申請書が電子化されており、申請メニューを探すのが大変です。そこでポータル上で申請画面へのリンクを検索できる機能を提供することで、速やかに業務を進められるようにしています。ほかにも、社員の勤務状況を確認できたり、指定した部署に所属するメンバーの間だけで情報の共有ができるなど、便利な機能を持っており、任天堂で働くうえで欠くことのできないポータルになっているのです。
ポータルは全社員が利用するため改善要望を受けることも多く、構築されて以降、毎年新しい機能やコンテンツが追加されています。そのため次第につぎはぎ状態となり、デザインの統一感がなく、使い勝手もいいとは言えないものになっていきました。システムの老朽化もあって、UIや機能のすべてを作り直すことが検討されるようになったのですが、機能については不満が少なく、どちらかというと使い勝手の悪さを感じているという声が多かったため、まずは見た目のデザイン・UIから見直そうということになりました。
社内ポータルは、任天堂の全社員が使うものですが、社員それぞれに立場や業務内容が大きく異なるため、いろいろな意見を取り入れながらデザインの見直しを行う必要がありました。そのため、社員に対してアンケートを実施するとともに、アクセスログを分析して、ポータルの利用状況を把握することにしました。その結果、使えば便利な機能を用意しているにもかかわらず、利用している社員が意外に少ないということがわかりました。それは、ポータル内のコンテンツが整理されておらず、見つけにくい場所に置かれていたことが原因でした。こうして見えてきた課題を踏まえ、私たちのチームでデザインを検討しました。全体を見直すということで規模が大きかったことから、Webデザイナーにもサポートを依頼しました。
デザインが決まったら、いよいよ開発が始まります。しかし開発中も、さまざまな部署から、デザインの見直しとは別の要望が寄せられました。中にはデザインの見直しよりも優先しないといけないものや、改修箇所に大きく影響するような相談もあり、要望とデザインをどう統合するかが難しい場面もありました。そこで、以前から実施していた「朝会」と呼んでいる毎朝の短いミーティングを活用することにしました。チームのメンバーだけでなく、開発のサポートをしてくださる外部のベンダーさんにも参加していただき、どうすれば要望に応えられるか、どうすれば使いやすいポータルになるのかなどを議論し、さまざまな意見を取り入れながら決めていくようにしました。
新デザインのポータルの開発期間はおよそ半年になりました。その間、いろいろな要望や課題を整理したり、それらを効率よく解決するために実装する順番や検証するタイミングを調整することが私の主なタスクでした。入社3年目で、ポータル担当者としての経験が浅く、要望の内容を理解しきれなかったり、誰にどんなタスクを割り振るとスムーズに進められるのか自分1人では判断できないこともありました。そんなときは朝会を活用して、チームの先輩たちに相談しながら解決しました。無事に新しいポータルをリリースすることができたときには大きな達成感を味わうことができました。
この仕事で一番嬉しかったのは、リリース後に同期や先輩たちからかけられた言葉です。身近な人たちから「使いやすくなったね」「新しいデザインいいね」と言われたときは、本当に報われた気持ちになりました。