デザインと技術を橋渡しデザインと技術を橋渡し

デザイナーが実現したいことをチームで叶える

任天堂には「CGスペシャリスト」という仕事があります。CG業界では一般的にテクニカルアーティストなどと呼ばれることがありますが、社内デザイナー組織では、デザイナー目線でCG技術を専門的に扱う職種のことを、「CGスペシャリスト」と呼んでいます。

私は当初、CGに詳しいキャラクターデザイナーとして入社し、『スーパーマリオメーカー 2』のプロジェクトにキャラ担当としてアサインされました。その時点では、開発チームにCGスペシャリストがまだ合流していませんでした。

チームの規模は、ほとんどのデザイナーを見渡すことができるくらいにコンパクトで、振り向けば、制作している人たちの手元を見ることができるような環境でしたので、制作上のさまざまな問題点に気づくようになりました。「手作業がボトルネックになっていないか?」「もっと効率よく進められるところがないか?」と気を配り、そして、改善できそうなところを見つけたら、積極的に補助ツールを作成し、効率良く制作が進められるよう環境を整えていきました。

そうして、チームメンバーと親しくなり相互理解が進むと、次第に技術的な相談を持ちかけられることが増えてきて、キャラ担当の仕事と併行して、徐々にCGスペシャリストの業務も担うようになりました。最終的にこのチームでは、大小30個ほどのデザイナー向けツールを提供しました。

CGを制作するときに欠かせない技術のひとつに、「画像を焼き付ける」という意味の「ベイク」という技術があります。プロジェクトの終盤になってから、今まで利用してきたベイクシステムからさらなる品質向上と効率化を目指すため、新しいベイクシステムを導入する必要が出てきました。

それまでチームではポリゴンの頂点に色を焼き付けるベイクを利用していたのですが、クオリティや開発効率が課題となっていました。ちょうど社内のプログラマーが新しい「テクスチャベイク」を開発しているという話が伝わり、その導入を進めることになりました。

このとき、ベイクシステムの開発も兼ねての導入となったため、私が窓口となり、システム開発プログラマーとチームのデザイナーの橋渡しをすることにしました。

「ベイク」によって事前計算されたライティングのための画像

役割は問題解決と技術提供

限られた時間の中で、システムをスムーズに導入するために、私はまず二つの課題設定を行いました。

ひとつは、新しいベイクシステムの仕様の理解です。過去にさまざまなベイクシステムを触ったことがある経験を活かし、仕様の把握とクオリティ面のテストなどを、ベイクシステム開発担当のプログラマーとやり取りしながら検証しました。アートディレクターが求めるクオリティに達するには、システムへの要望を出すことも必要でした。

もうひとつは、チームのデザイナーが実現したいビジュアルを効率よく量産していくための仕組みづくりです。新しいベイクシステムは高機能で魅力的でしたが、直接デザイナーが操作するには難しいものでした。そこでデザイナーの要望を聞きつつ、必要なパラメーターを洗い出し、パラメーター調整を簡易にミスなく行えるチーム専用のインターフェースを構築しました。

結果として、新しいベイクシステムのポテンシャルを引き出しながら、デザイナーが安心してクオリティアップに集中することに貢献できたと考えています。

このように、CGスペシャリストの役割は、「デザイナー目線」と「技術的目線」の両方を活かした問題解決と技術提供にあると思っています。その目的は、デザイナーの開発効率を掛け算のように向上させることにあります。
『スーパーマリオメーカー 2』のプロジェクトに参加することで、職種やセクションの垣根を越えて、チーム全体でものづくりをしているという実感を得ることができました。そして、みんなでひとつの商品を世に送り出すという醍醐味を味わうことができたのは、任天堂に入ってよかったと思えたことのひとつです。

社員略歴

山上企画制作部/2018年入社
2018年にキャリア採用で入社。
Nintendo Switch『スーパーマリオメーカー2』(2019年)のキャラクターデザインおよび3Dグラフィックスのテクニカルサポートを担当。
現在は複数プロジェクトを横断的に担当し、
・内製リグシステムの整備
・DCCツールのカスタマイズやワークフローの構築
など広範なCGスペシャリスト業務を行っている。
職種

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