もともと大学院でセラミックスという材料の研究をしていたのですが、任天堂に新卒で入社し、最初に配属されたのは製造部門(購買管理部)でした。そこでは、任天堂のハードに搭載される部品の調達などの業務に関わることになったのですが、調達部品の原価分析をしたうえで、調達先を選定し、取引先と一緒に品質や納期や価格の課題を解決していく業務は、理系の知識も活かすことができ、楽しく働くことができました。
購買管理部で経験を積み、入社して9年が経ったときに、販売戦略部門に異動することになりました。異動先の営業戦略室の業務は、自社製品の販売戦略プランニングやNintendo Switch Onlineなどのサービス運営、マイニンテンドーストア、ニンテンドーeショップに関わる業務、キャラクターライセンス業務やデータ分析業務など多岐に渡ります。その中でも私が配属されたグループでは、任天堂から発売されるすべてのゲームソフトやハード、アクセサリーの発売時期や販売価格、販売形態、販売方法などをグローバルな観点でプランニングする仕事を行っています。
ゲームソフトの発売時期を決める業務では、開発スタッフや海外販社と密に連携しながら販売戦略を練ることが不可欠になります。グループのメンバーそれぞれが、開発中の多くのソフトを担当するのですが、私は製造部門の経験で培ったハード開発・製造の知見を活かして、ソフトだけではなく付属の周辺機器を使用することで、独自のゲーム体験ができる『Nintendo LABO』や『リングフィット アドベンチャー』などのタイトルを担当することが多くありました。なかでも『マリオカート ライブ ホームサーキット』は、試行錯誤をすることの多いタイトルになったのです。
カメラが搭載されたカートを、Nintendo Switchで操作して遊ぶ『マリオカート ライブ ホームサーキット』は、現実とゲームを融合させたゲームです。これまでにない体験を提供する新機軸のタイトルだけに、実際に見たり触ったりしてみないと、その魅力が伝わりにくいゲームでもありました。そこで、任天堂の直営ショップであるNintendo TOKYOで、スタッフが実演プレイを行い、カートとゲームが連動するといった本作ならではの特徴をお客様にお見せしたところ、非常に興味を持っていただけましたので、家電量販店でもイベント開催を企画しました。残念なことにコロナ禍によってそのイベントは実現できませんでしたが、このタイトルの魅力がお客様にしっかり伝わるように、販売店の店頭では、Nintendo Switch本体にプレイ映像を流して実物のカートと一緒に展示したり、プレイヤーが実際にプレイしている動画を店頭で流して臨場感を演出したり、制約条件がある中で、お客様に製品の魅力を最大限お伝えできるよう工夫をしました。また、スーパーマリオ35周年の企画に合わせてプロモーションを展開したり、長く遊んでいただけるように、発売後のアップデート計画についても、開発スタッフと検討しました。その他にも、多くのご家庭で遊んでいただいたり、できれば複数台での対戦プレイを楽しんでいただけるような販売価格を実現するために何かできることはないかと、ソフト開発・ハード開発・製造部門と何度も協議しました。
このように、私たちの仕事は、製品の開発段階から販売までのプランニングを通じて、お客様へ製品の魅力を正確に伝え、世界中の多くの人に届けて笑顔になってもらうことです。そのためには、開発チームはもちろん、製造部門、マーケットを分析するチームや、プロモーションを担う部署、国内外の販売部門など、さまざまな部署の人たちと協力することが重要です。
営業戦略室の業務は前例のないことにチャレンジすることが多いのですが、一人でも多くのお客様に欲しいと思っていただき、笑顔で買っていただくために、誰よりも製品のことを考え、熱意をもって取り組むことが大切です。また、前例のない取り組みを進めるうえで、目標に向けた意思と情熱が大変重要で、学生のころに学んできたことや、入社してからの他部署での経験など、さまざまなことに真摯に向き合って励んだことが、今の仕事に活かされているように思います。
社内・社外を問わず、いろいろな人と協力しながら、任天堂のゲームの良さをお客様にお伝えし、多くの方に手にとっていただけるような販売戦略プランを提案できるこの仕事に、私は大きなやりがいを感じています。