11 | 宮本専務にご回答いただきたい。現在の開発への関わり方について、コアアイデアを出すような立場にあるのか、ハード、ソフトの両面で実例等があれば教えてほしい。もう60歳ぐらいになっているのではないか。もし宮本さんがいなくなったら今後の任天堂はどうなってしまうのか少し心配なのだが、今後どういった取り組み方をしていくつもりか。 |
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専務取締役・情報開発本部長 宮本 茂: 私もその自覚を結構しています。毎年歳はとっていきますから、将来のことは考え始めていますし、社内的には、そういう準備は着々と進んでいるという手ごたえを感じています。昨年そういう、いろいろトライをしているというお話を海外のメディアで少し話をしたら、いきなり引退報道というのが出て、「これはうかつにしゃべれないな」と思っているところです。 岩田: 「部内でいつも『俺はもうすぐ引退するんだ』と言っている。そうしないと、みんなが自分がいなくなることを考えないので、『俺はもうすぐ引退するんだぞ』と言ってみんなにはっぱをかけてる」と説明したら、宮本茂引退報道になってしまったということです。 宮本: 私自身が今何をしているかとか、クリエイティブにどれぐらい興味を持っているかという意味では、今までと全然変わっていないんですね。ただ、私が今大きな、例えば『マリオカート』であるとか、新しい『スーパーマリオ』をどうしていこうかということに一生懸命取り組んでいるかというと、これはもう、どんどん若い世代の人たちに主軸を移して、一緒に考えるという立場に移っていっています。 例えば、最近大物として手掛けたのは、先ほどのルーブル美術館のマルチメディアガイドというものですね。これはまだ決して大きなお金は生んでないんですけれども、将来の当社のビジネスの中で大きな核になり得る可能性があります。日本の映画業界はどうなっていくのかとか、今度『Nintendo Land』というゲームは作りますが、そういうところにはまったく興味を持たなくていいのかと言うと、全然具体的なビジョンではないんですが、そういう細かい、任天堂が将来に向けて持てる可能性というのをいろいろ当たっています。そういうことがすぐに経営方針として出てくるとか、具体的なものとしての発表ではないので、ここではちょっと注意して発言するべきで、みなさんにも人にお伝えするときに気をつけていただきたいんですが、そういう大きな、将来に向けてのいろいろな背景の中で次のプロジェクトをどうするかというのが非常に大事なんですね。そういう意味で、先ほどネットワークの話も出ましたけれども、そういう大きなものの中で次のプロジェクトを具体的にここに落とすべきという判断は私がしています。それをいずれは現場で一つずつものを作っている人たちが直接できるようになってほしいということで、「明日から来ないかもしれないよ」ということを言い続けながら、まだ現場で一緒に仕事をしています。楽しく開発をしていますので、まだまだ現役のものを出し続けていきますのでご安心ください。期待してください、よろしく。 岩田: 私から申しあげられることは、宮本はまだまだ現役でものを作ると思いますが、一方で世代交代の準備を何もしていないということはありません。当然ここにいる人間は必ずいつか歳をとり、いつか今の能力を発揮できなくなり、そのときに後進がいなければ任天堂は大きく力を落とす可能性があるわけですから、そのための準備はしております、ということは申しあげておきます。 |
12 | 据え置きではWiiが一番で今のところシェアもトップだと思うが、ここ2年ぐらい、PS3やXbox360では出るけどWiiでは出ないという、いわゆるマルチ展開をはずされるということが日本でも海外でも見受けられる。その点でWii Uは、4、5年後、いわゆるハード成熟期になったときに、次のマイクロソフトさんの次世代機やパソコンに対抗できるのか。「このソフトは他社では出るけどWii Uではちょっと性能が足りないから出せません」といったことがないか少し心配だが、その点で何か工夫していることがあれば教えてほしい。 |
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岩田: まず、Wiiが、特にこの直近の2年ほど、少しソフトメーカーさんからのソフトの本数が減ってきたり、あるいは任天堂自身もニンテンドー3DSそしてWii Uの準備がありましたので、任天堂の自社の提案も含めて、それが減ってしまい、結果、勢いが維持できていないということがあります。また、Wiiには、Wii Uで考えているような、先ほどお話ししたニンテンドーネットワークの『Miiverse』のような、お客様同士の交流で新たなソフトウェアに出会うという仕組みもありませんでしたから、新製品が一時的に盛り上がって、それが終わるとまた静かになってしまうというような状況になりやすくなっていたと思います。 一方で、今のご質問の、「Wii Uではマルチ展開がはずされるような心配はないのか」という点ですが、もちろん未来永劫どうかは分かりませんけれども、少なくともWiiのときにあった、「他社の機械はいわゆるHDTV対応、高解像度の画像が生成できて、グラフィックスの能力がまったく違う」というようなことは、Wii Uと他社さんの機械についてはありません。もちろん他社さんがより新しい世代の機械を出されたときに性能は上がるかもしれませんが、一方で、Wiiのときに他社さんの機械との比較で感じられたほど、Wii Uと他社さんの機械が劇的な差を生むとは、必ずしも思っていません。グラフィックスにおいて差別化できる要素というのはだんだん少なくなっていくと思います。もちろん、そのわずかな違いをすごく敏感に感じとられるお客様もおられますから、当社もWii Uの性能をどんどん引き出す努力をしてついていこうと思っています。そして、技術の革新があっても、すぐに時代遅れのものにならないようにしようとはしていますが、一方でWii Uというのは、構造的にいわゆるテレビゲーム機と、いわゆる携帯型ゲーム機が一つの箱に入って一体になって提案されているわけで、普通にそれぞれ当たり前のぜいたくをし過ぎますと、今度は携帯型ゲーム機と据置型ゲーム機を合わせたほどの値段になってしまって、それではお客様にご支持いただける値段にならないだろうということもありますので、どこがバランスポイントかということを見極めながら設計をいたしました。 また、テレビゲーム機というのは、そもそも長年家庭のテレビに、この言葉が適切かどうかは分かりませんが、「寄生してきた」と言ってよいと思います。すなわち、画面表示装置は自分では持ちませんでした。家庭にテレビというものがあるから、それを使わせてもらうわけですね。ところが、今回Wii Uは、テレビゲーム機として初めてテレビから自由になったゲーム機なんです。すなわち、テレビを家族の誰か他の方が使っておられてもWii Uを触ることができるわけです。あるいはテレビの番組を見ながらでもWii Uは使えるわけです。もちろん、2画面同時に使えればもっと濃密な体験ができますから、そういうソフトもどんどん提案していきたいんですが、一方で『Wii U GamePad』という手元の画面付きのコントローラーだけで遊べる遊びも充実させていこうとしています。また、2画面を使った遊びというのは、単にニンテンドーDSでやったものと同じというだけではなくて、テレビの画面と手元画面というのは位置関係が自由ですから、ニンテンドーDSのときにように2つがくっついていて位置的に決まった関係でしかないというのではない、新しい使い方ができますし、複数人プレイでGamePadを持っている人と、普通のコントローラーを持っている人の間には違う役割が生まれます。例えば、鬼ごっこをするときに鬼の役と逃げる役というのはまったく違う役ですが、同じ遊びをしますよね。それと同じような、私たちは「非対称性ゲームプレイ」と呼んでいるんですが、そういうことをします。また、実際にメインのテレビ画面でゲームを遊んでいるときに、他の人はどうしているのかなということも分かります。家で一人で遊んでいるけれども、ほかの家のリビングルームで遊んでいる別のゲームプレイヤーと自分が交流するときに手元の画面は窓として機能します。私はそのことを「ソーシャルウィンドウになる」というような表現をしたんですが、いわばリビングルームとリビングルームをつなぐ窓にもなり得るわけです。 そして、これはゲーム機ですから、あくまで付加的な要素ではありますが、リビングルームでのテレビの使われ方も変わると思っています。具体的に言うと、例えば今はインターネットにさまざまな動画が載っていて、その動画の中には非常に面白いものがあって、家族のエンターテインメントになるようなものもたくさんあるんですが、そういうものは従来パソコンであるとか、あるいはスマートフォンであるとか、タブレットのようなものでご覧になっていたわけですが、手元の画面でそれを探して、「これ面白いからみんな見てよ」と言ったら、みんなが見る大きな画面のテレビにひょいっと移すことができるようになるわけで、動画共有サイトも立派なエンターテインメントになると思います。また、これは日本よりも海外の方が盛んですが、「ビデオ・オン・デマンドサービス」といいまして、インターネットを通じて映画やテレビ番組をネットを通じて見るという視聴形態も非常に広く一般的に使われていますので、そういうものにおいてもとても使いやすいものになると思います。ですから、単純に他社さんとの、他社さんの機械との性能競争ということだけではなくて、いろいろな使い方の提案がされることで、結果的に今までゲーム機を触らなかった家族のいろいろな方が、「Wii Uがあると何となく便利であったら使ってしまう」という未来にすることによって長い間競争力を維持したいと思っております。 |
13 | 私は、任天堂さんは本来の力を出し切っていない、今あるものを活用すればもっともっと良くなると思っている。具体的なプランがあり、それをぜひ、今日とは言わないが、明日にでも、10分間ほどでいいので、宮本専務、竹田専務、社長さんにできれば聞いてほしいがどうか。 |
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岩田: 具体的なご提案を受けるために、役員の人間がまとめて時間をとるということはちょっと難しいと思いますが、今日事務局の者がおりますので、彼らに伝えていただければ、必ずその報告を受けるようにしますので、それでいかがでしょうか? |
14 | Wii Uについて、タッチパネルと2画面になるということで、「これはDSとの互換性を持たせるのではないか」と考えた。3DS LLなど、少しでも大きい画面で遊びたいと思っている方も少なからずいるので、そういったおまけなども考えているか。 |
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岩田: 今のご質問について、今日の時点でやりますともやりませんとも申しあげられないんですが、「そういうニーズもありますよ」というご意見として頂戴し、社内でも研究したいと思います。 |
15 | 「ゲーム人口を増やす」ということで、例えばアナログ的な商品でゲーム人口を増やす構想など、コンピューターゲーム以外での取り組みはあるか。 |
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岩田: ゲーム人口を増やすという意味では、いわゆるデジタル型の商品だけではなくてアナログ型のことも考えてはどうか、というご提案と受け止めました。一方で、任天堂が世界に向けてビジネスをするということを考えたときに、コンピューターのソフトウェアというのは、いろいろ都合のいい特性がございまして、いったんハードウェアが普及しますと、ソフトウェアというものは非常に量産が容易で、たくさんの方に一気にお届けすることができ、また、昨今のデジタル技術、ネットワーク技術の進歩によって、それらを有機的につないでいくことが可能になるというメリットがあります。もちろん、アナログ的な遊びというものを一切、今後検討に入れるつもりはないということはありませんし、任天堂はそもそも創業時からのビジネスとしてトランプや花札の製造は今でもしておりますし、また、今後ともそれは続けていくつもりですから、そういうものと、われわれの得意とするコンピューターを使ったインタラクティブエンターテインメントの組み合わせにもっと面白い可能性があるのではないのかというご提案と受け止めて、今後検討していきたいと思います。 |