岩田
宮本さんは以前、パブリックスペース利用チームのなかで、
「僕はちょっとまちがっていた。方針を変える」
と宣言したことがあるんですよね。
宮本
はい。いままでイクスピアリ、教室、美術館、水族館・・・
と推進してきたんですが、ふと立ち止まって考えたんです。
僕が本当にやりたかったのは、
商店街や青年会でみんながイベントを考えたり、
遊びをしかけたりできるものだったんじゃないかな・・・と。
そんなとき、「DSiウェアにしてはどうですか」
といった提案がスタッフからあったんです。
岩田
その提案が、今回、無料配信されることになったDSiウェア
『じぶんでつくる ニンテンドーDS ガイド』につながるんですね。
宮本
そうなんです。
DSiウェアなら、『DSガイド』をもっと身近なものとして
つくったり、使ってもらえたりできると感じたんです。
それにDSiならカメラも音声録音もついているので、
DS1台だけで、すべてのデータがつくれるんです。
『うごメモ』(※27)のように無料で配る方向ではじめたら、
わりとトントン拍子でできたんです。
※27
『うごメモ』=『うごくメモ帳』。2008年12月に配信が開始された、無料のニンテンドーDSiウェア。タッチペンで手書きメモを作成できる。また、何枚も書いたメモを再生して、パラパラマンガ(動画)をつくることができる。『うごくメモ帳』について詳しくはこちら。
西澤
トントントンって・・・。
宮本さんからのプレッシャーはすごかったですよ(笑)。
岩田
西澤さんは、今回のDSiウェア版の開発も
担当されたんですよね。
西澤
そうです。宮本さんから、
「地蔵盆(※28)や秋の学園祭までには配信するんだ!」って言われて
大変でした・・・(笑)。
※28
地蔵盆=主に近畿地方で行われる夏の行事。地蔵菩薩の縁日である8月24日を中心に町内規模で行われる。
宮本
ああ、それはそう(笑)。
結局、こだわり出していろんな機能をつけ加えていったら、
思ったよりも時間がかかってしまって、
残念ながら地蔵盆での肝だめしやスタンプラリーには
間に合わなかったんですけど・・・。
でも、自分でガイドをつくりたい人は
世の中にたくさんいると思うんです。
だからこそ、できるだけ手軽に
使ってもらえる環境にしたかったんです。
岩田
(『DSガイド』を触りながら・・・)
まずはDSiカメラで写真を撮った後、『DSガイド』を起動して、
“編集モード”から“データ編集”を選ぶと、写真一覧が出てくる。
ガイド番号と写真を選んで、音を吹き込む。
あとは順番を入れ替えたり、繰り返したり、自由に設定する、と。
宮本
そうです。音声ガイドのように、パネルを選んで番号を押せば、
写真と音が出てくるんですよ。配信するなら、“配信モード”から
まず“再生ソフト配信”で『DSガイド』のプレーヤーを配信後、
自分で作成したものを“データ配信”で送るだけ。
岩田
ずいぶん簡単ですね。
宮本
はい。“スライドショー”機能(※29)というのもあって、
フォトフレームに音声ガイドがついたみたいな手軽さなんです。
サンプルをスタッフに渡したら、カメとカニのレースを描いてきて、
連続再生して“音声つきの4コマ漫画”をつくってきました。
※29
“スライドショー”機能=DSガイドで編集したデータを連続再生する機能。
岩田
ガイドとして使わなくても、使い方は幅広くて面白いですね。
澤野
絵本を写真に撮って、お母さんが子どもに
朗読してあげることもできるんですよ。
自分で紙芝居をつくって、それを写しても楽しいです。
宮本
たとえば、まずは“我が家自慢”をつくりましょう(笑)。
リフォーム番組の音楽をバックに流しつつ、
「長い玄関のアプローチは、
お母さんのお気に入りの花で飾られています・・・」とか・・・。
岩田
すごくいい我が家のプロモーションになりますね(笑)。
宮本
いろいろと楽しいものがつくれそうなのでアイデアを募集します!
岩田
ものをつくる手段さえあれば、つくりたい、
という大勢の方たちに面白い道具をご提案する。
それがDSiだけあればいいんですね。
宮本
昔からすると、夢のような時代だと思います。
1台のゲーム機だけで、デジタルなサービスや
遊びができるんですから。
西澤
これをキッカケにDSを持ち歩いていただきたいですね。
宮本
DSiウェアの『DSガイド』の場合は、
『DSガイド』の再生ソフトを配信し続けるDSiと、
自分でつくったデータを配信し続けるDSiの2台があると便利です。
お店のなかで、2台のDSiを置いて配信すれば、
次々と新しいお客さんに入れ替わってもつづけて使えて、
店長のブログやスタッフの声など、
いろんな手づくり情報を流せます。
岩田
写真なので、絵を描けない方でもOKですからね。
ちなみに、みなさんは今回のDSiウェア版の話が
進んでいくのを、どう思っていましたか?
清水
僕は、宮本さんには以前お伝えしましたが、
自由にコンテンツをつくって配れるということ自体、
すごくチャレンジングだと感じています。
だからぜひ、みんなでいいものにして育ててもらいたいです。
澤野
わたしは、昔、FMの小さな個人放送局を
つくったことがあるんです。
それが今、時代が進んでこんなにすごいことが
できるようになったんだなあと、しみじみ感じています。
商店街がこれを導入してくれたら、とても面白いでしょうね。
西澤
実は清水さんからもいろいろな提案がきましてね。
難しい提案だったんですが、清水さんのお陰で、
『DSガイド』の機能がさらに充実したものになりました。
宮本
おお、うつくしい話だ(笑)。
清水
僕は東京なので、いつもテレビ会議でさびしかったんです(笑)。
あるとき西澤さんがロムを送ってくれて、喜んで触ったら・・・。
岩田
嬉々とした清水さんから、山ほど“建設的な提案”がきた(笑)。
宮本
やはり、納期を間に合わせることと、使った人が満足すること、
どちらを優先するかといったら、僕は後者なんです。
「使ってよかった」と言ってもらえるからつくる意味があるので。
また、『DSガイド』のポイントは“告知”だと思っていますので、
こちらで配信告知のポスター(※30)をサイトにつくりました。
それをダウンロードしてプリントすれば、
手軽に貼れるようになっています。
※30
配信告知のポスター=『じぶんでつくる ニンテンドーDS ガイド』から配信されるデータの受け取り方を告知する、案内用のポスターについて詳しくはこちら。プリントしてご使用いただけます。
清水
街に告知ポスターが増えれば、パブリックスペースで
DSが使われていることが知られて、持ち歩く方が増えますね。
岩田
何かを表現したい方に
この『DSガイド』という道具が渡ったとき、
どういったことが起こるのか、見極めたいというのが
宮本さんの今の気持ちでしょうね。
宮本
そうですね。DSの技術があれば、昔からつくりたかった
デジタルな遊び道具をつくることができるので、
今後も積極的に取り組みたいと思っています。
岩田
今回のDSiウェア版は、宮本さんからの“挑戦状”であり、
パブリックスペース利用を広めるための新たなご提案ですね。
宮本
まあ、僕は、あまのじゃくですから(笑)。
先生が「DSを学校に持ってきちゃダメ!」と叱られるところを、
「明日はみなさん、DSを持ってきてください」
と言っていただける世の中になったらいいなあって思ってます。
岩田
最後に宮本茂の野望が訊けました(笑)。
みなさん、今日はありがとうございました。
一同
ありがとうございました。