コーポレート・ガバナンス
任天堂に関わるすべての人の利益を考慮しつつ、長期的・継続的に企業価値を最大化できるよう、透明性の高い健全なコーポレート・ガバナンス体制の構築と企業倫理の向上に努めています。
コーポレート・ガバナンス体制
任天堂(日本)は、取締役会の監督機能を強化し、コーポレート・ガバナンス体制の一層の充実を図ることを目的として、監査等委員会設置会社制度を採用しています。また、経営の意思決定および監督機能と業務執行機能を分離させ、業務執行権限の委譲を推進することで業務執行における責任の所在を明確にするとともに、事業環境の急激な変化にも適切かつ迅速に対応できる機動的な経営体制を構築することを目的として、執行役員制度を導入しています。
取締役会は、取締役13名(監査等委員である取締役は5名)で構成しており、このうち社外取締役は6名(監査等委員である取締役は4名)です。社外取締役は全員、株式会社東京証券取引所の定める独立役員の基準を満たしています。 また、原則として毎月1回開催の取締役会のほか、経営活動を強力に推進するために、代表取締役および役付執行役員を兼任する取締役で構成される経営会議を原則として毎月2回開催して迅速かつ効率的な意思決定を行うとともに、取締役会において毎年選任される執行役員が、社長の指揮・命令のもと、担当業務の執行を行う体制としております。
さらに、取締役会の任意の諮問機関として、代表取締役社長およびすべての監査等委員である取締役で構成される指名等諮問委員会が、取締役等の指名・報酬に関する事項を審議し、取締役会に答申いたします。
監査等委員会は、常勤の社内取締役1名、社外取締役4名で構成しています。監査等委員は、取締役会等の重要会議への出席、重要書類の閲覧、社長との定期会議をもつほか、原則として毎月、監査等委員会を開催し監査意見の交換を行っています。また、年間監査計画に基づき、常勤の監査等委員が社内各部門他への往査を行っています。
内部監査については、社長直轄の内部監査室が、業務部門から独立した公正・不偏の立場で内部監査を行い、関係会社を含む内部統制の推進・改善に取り組んでいます。
会計監査について、会計監査人は、監査等委員会および内部監査室とも緊密な連携を保ち、監査計画および監査結果の報告とともに、期中においても必要な情報交換および意見交換を行い、効果的かつ効率的な監査を実施しています。
コーポレート・ガバナンス体制の詳細については、「コーポレート・ガバナンス報告書」(Ⅱ 経営上の意思決定、執行及び監督に係る経営管理組織その他のコーポレート・ガバナンス体制の状況)をご覧ください。
任天堂の内部統制について
任天堂においては、法令等に基づき、グループ各社のビジネスの実情を踏まえた内部統制システムを整備し、運用しています。内部統制システムの詳細については、「コーポレート・ガバナンス報告書」(IV 内部統制システム等に関する事項)をご覧ください。
取締役の報酬制度
任天堂(日本)の取締役の報酬は、株主総会の決議により定められた、監査等委員でない取締役および監査等委員である取締役ごとの報酬限度額の範囲内で決定しています。
なお、報酬水準等については外部調査機関の報酬調査を参考にするほか、報酬に関する事項については、社外取締役を主要な構成員とする任意の指名等諮問委員会において事前に審議し、取締役会に答申する体制としています。
監査等委員でない取締役の報酬は、固定報酬、短期インセンティブとしての業績連動報酬および長期インセンティブとしての株式報酬によって構成しています。ただし、社外取締役の報酬は、業務執行を行わず経営に対して監督・助言する立場にあることを考慮して固定報酬のみで構成しています。
固定報酬、業績連動報酬および株式報酬の比率は特段定めていません。
固定報酬は、取締役会より委任を受けた代表取締役社長が各取締役の役職・業務執行の有無等の役割に応じて個人別の報酬額を決定し、毎月同額を支給しています。
業績連動報酬は、連結営業利益を指標とし、取締役会にて決定する限度額の範囲内で、各取締役の役職に応じたポイントをもとに事前に取締役会が定めた算式により算出した額を、毎年一定の時期に支給しています。さらに、支給対象年度を含む直近3事業年度の連結営業利益平均値および支給対象年度の連結営業利益のいずれもが、事前に取締役会で定めた金額を超過する場合には、追加の業績連動報酬を支給します。なお、追加支給する金額については、事前に取締役会で定めた算式により算出した額とします。
株式報酬は譲渡制限付株式とし、取締役会にて各取締役の役職に応じた個人別の割当株式数を決定し、毎年一定の時期に支給しています。譲渡制限については、対象取締役が任天堂(日本)の取締役および執行役員のいずれの地位からも退任した場合に解除します。
監査等委員である取締役の報酬は、業務執行を行う取締役から独立して監査・監督を行う立場にあることを考慮して固定報酬のみで構成しています。個人別の報酬額は、監査等委員の協議により決定し、毎月同額を支給しています。
取締役の報酬制度に関する詳細は、「コーポレート・ガバナンス報告書」(Ⅱ 経営上の意思決定、執行及び監督に係る経営管理組織その他のコーポレート・ガバナンス体制の状況)をご覧ください。
コンプライアンス
任天堂は永続的な発展のために、法律や社会規範等を守ること、すなわちコンプライアンスが不可欠だと考えています。企業運営の基盤となるコンプライアンスを強固なものにするため、それぞれの地域の事情に合わせた行動規範を定め、遵守を徹底しています。
コンプライアンス委員会の活動
任天堂(日本)では、経営会議の下にコンプライアンス委員会を設け、コンプライアンスの推進状況を把握したうえで、施策の立案を行っています。また、コンプライアンス徹底のための仕組みや役員および社員全員が共通して遵守すべき基本的なルールを定めた「コンプライアンス・マニュアル」を制定し、定期的に改訂を行っています。
コンプライアンス行動規範
- 法令等を遵守します。
法令や社内規則・規程、社会規範を厳格に遵守し、公正で自由な競争を行い、高い倫理観に立った事業活動を行います。
- 透明性の高い経営に努めます。
株主や社会に対する適切な情報開示を推進し、透明性の高い経営に努めます。
- 反社会的勢力との対決姿勢を堅持します。
反社会的勢力に対しては、毅然とした態度で対応します。
- 信頼される企業となるよう努めます。
事業の社会性を十分認識し、健全な事業活動を展開することにより、ユーザーをはじめ社会からより信頼される企業となるように努めます。
「コンプライアンス・マニュアル」より抜粋
任天堂では、グループ全体のコンプライアンスの強化・推進のため、コンプライアンス委員会の下に、任天堂(日本)および主要な海外子会社のトップマネジメントおよびコンプライアンス責任者による「グローバル・コンプライアンス・コンファレンス(GCC)」を設置しています。具体的な活動としては、主要グループ会社のリーガル責任者が一堂に会して行う担当者ミーティングを年に2回実施しています。GCCの実務的な活動組織である同ミーティングでは、各社のコンプライアンス状況および今後の法的リスクなどについて意見交換を行い、共通認識の確立と情報共有に努めています。
コンプライアンス・ホットライン
任天堂(日本)では「コンプライアンス・ホットライン」(内部通報制度)を設けています。この制度は、社内で発生した、または、発生する恐れのある不正な行為や事業活動を社内の者が知り得た場合に、社長もしくは監査等委員会またはその両方に、直接、秘密が保持された通報を行うことができる制度です。匿名による通報も可能で、通報者に一切の不利益が生じないよう定められています。新入社員向けの研修の中でも周知しています。
主要な子会社においても、各国の法制度に合わせて、社内の不正行為を通報できる内部通報制度を設けています。また、万一各社のトップマネジメントが関与する不祥事が発生した場合に備えて、主要な海外子会社の社員が任天堂(日本)の社長に直接通報できる制度も設けています。
腐敗行為の防止
任天堂(日本)では、公務員等に対する贈賄の禁止、接待・贈答の制限等のルールを定めるとともに、「コンプライアンス・マニュアル」において贈収賄等の腐敗行為や関連する法令、上記ルールについて事業活動に即した詳細な解説を行うことで、社内の理解を促しています。また、腐敗行為の対応部門を定めて予防に努めるほか、万が一腐敗行為を認識した場合には、速やかに事実関係を調査し、再発防止措置を講じることとしています。海外子会社においても現地の法律に従い、腐敗防止について現地の行動規範に組み込んでいます。
コンプライアンスに関する情報については、「データ集」もご覧ください。
任天堂(日本)行動規範(抜粋)
接待・贈答への態度
- 原則として接待や贈答を受けません。止むを得ない場合でも、社会通念上妥当な範囲を超えた接待や贈答は決して受けません。
- 取引先へのたかり行為をはじめとして、個人的な便宜を図るような依頼は、それをほのめかす行為を含めて行いません。
- 取引先等に対する接待・贈答は社内基準に従い、社会通念上妥当な範囲内で行います。
- 政治(政党)・行政(官公庁)に対しては、国内国外を問わず、公正で健全な関係を構築し、維持します。癒着や誤解を与えるような行為はしません。献金や寄付を行う場合は、社内手続きに従い、贈賄や違法な政治献金、利益供与は行いません。
反競争的行為の禁止
任天堂(日本)では、独占禁止法などの公正競争に関する法令の遵守を徹底するための活動を行っています。例えば、独占禁止法や下請法に関して、任天堂の事業活動等に即した具体的な解説を盛り込んだ「独占禁止法マニュアル」を策定しており、毎年改定を行っています。また、新入社員向けの研修の中で反競争的行為の禁止について扱っているほか、各部門の業務内容に合わせて競争法に関する研修を実施するなど、社員の理解を促しています。
コンプライアンスに関する情報については、「データ集」もご覧ください。
任天堂(日本)行動規範(抜粋)
公正かつ公平な取引
- 優位な立場を利用した不当な取引等は行いません。取引先とは、公正かつ公平な取引を行い、健全で透明な取引関係を構築します。
- 取引先の選定にあたっては、広く参入機会を提供し、国籍や企業規模では判断せず、その必要性やサービス、品質、価格、納期等から、ビジネス上の利益に基づいて、総合的・合理的に判断します。
情報の保護と管理
任天堂(日本)は、さまざまな重要情報を適切に扱うため、「情報管理規程」や「個人情報管理規程」などの社内規程や「情報セキュリティ方針」を定めています。また、情報セキュリティを継続して向上させるために、取締役である技術開発本部長を委員長とする情報セキュリティ委員会を設置するとともに、定期的に監査を行っています。そして、秘密情報や個人情報に対してはアクセス制限を設けるなど、物理的・技術的な対策も行うことに加え、情報セキュリティに関する社内研修や訓練の実施などにより社員の知識の補足・定着を図っています。情報セキュリティ委員会事務局は、社内において情報セキュリティに関する事故等への対応を行うシーサート※1の役割を担い、日本シーサート協議会に加盟して情報収集に努めているほか、社内の関係者および海外子会社の同様のチームと適宜連携を取っています。
海外子会社もそれぞれ情報管理に関する方針を定めており、物理的・技術的な対策を講じるとともに、社員に対する教育の実施などにより意識の向上に取り組んでおり、継続的に個人情報管理に関するトレーニング、秘密情報管理に関するセミナーなどを行っています。
- ※1 シーサート(CSIRT: Computer Security Incident Response Team)
- コンピュータセキュリティにかかるインシデントに対処するための組織の総称。
任天堂では、各国でそれぞれ行動規範を定め、その内容について社員の理解を深めるための取り組みを行っています。
任天堂(日本)では、新しく入社した社員に対して、任天堂が大切にしている「任天堂DNA」と、任天堂社員として守るべき「行動規範」の双方に基づき編集した「社員心得」を学ぶための研修を行っています。
米国任天堂はビジネス行動規範において、全社員に求められる行動について明確に記した業務面および倫理面のガイドラインを設定しています。ビジネス行動規範に対する社員の認知度を維持するために、年に一度ビジネス行動規範理解度テストをオンライン上で受講することを全社員に求めています。回答期限後には正答と詳しい解説を社員にフィードバックしています。
欧州任天堂(ドイツ)では、社内ポータルサイトのeラーニングを通じて行動規範の研修を定期的に行っています。研修の最後には理解度テストを実施し、修了した社員にはデジタル修了証を授与しています。
また、任天堂オーストラリアでは、行動規範が改訂されるたびに人事部が社員全員に対してメールで周知しています。メールには行動規範に関するクイズや、新しい行動規範を理解したことへの同意を求める署名が含まれています。こちらは2023年2月に実施し、社員全員から同意を得られました。
リスクマネジメント
任天堂を取り巻くさまざまなリスクを特定・把握・評価し、リスクの軽減・発生防止を徹底すること、また万一事件・事故などが発生した場合には速やかな解決を図ることが重要であると考えています。
リスク管理体制
任天堂(日本)においては、各部門がそれぞれ所管する業務に付随するリスクを管理することを基本としています。各部門のリスク管理体制は、内部監査室がモニタリングし、改善等の施策の提案・助言を行う体制としています。また、コンプライアンス委員会のもと、各部門におけるコンプライアンスの徹底を推進する体制としています。さらに、情報セキュリティ委員会を設け、情報セキュリティの確保を図っているほか、製品安全委員会等を設け、製品の安全性を保証し、製品事故発生の防止と、万一、発生した時には速やかな対応を図ることとしています。
社会の秩序や安全に脅威を与える反社会的勢力には毅然とした態度で臨むこととし、社内に対応統括部署を設け、会社全体として対応する体制としています。
自然災害を想定した危機管理
任天堂(日本)では、自然災害などの有事に備え、初動対応に関する「緊急時対応計画」および事業の復旧・継続に関する「事業継続計画」を策定しているほか、社員の行動基準を定めた「危機管理マニュアル」を社内ポータルサイト上で全社員に公開しています。また、有事を想定した訓練として社員の安否を迅速に把握するための訓練や、社屋から素早く避難することを目的とした避難訓練などを実施しています。
海外の子会社でも、有事に備え各地域の状況に応じたマニュアル類を策定しています。例えば米国任天堂では、地域的なリスクを考慮し、事業の復旧と継続のための計画を定めた「事業継続計画」を策定しています。米国任天堂の「事業継続計画」は、四半期ごとの机上訓練を含む部門レベルの継続的な研修を、各部門の計画を統括する部門コーディネーターが管理すると定めています。部門コーディネーターは年1回、会社の「事業継続計画」に関する研修を受ける必要があります。このほか、すべての社員に対し、オンラインでの危機対応研修を毎年受講するよう義務付けています。