岩田
今日はよろしくお願いします。
辻本・藤岡
こちらこそ、よろしくお願いします。
岩田
以前、社長が訊く『モンスターハンター3(トライ)』で
お話をお訊きして以来になりますね。
辻本
そうですね。2年ちょっとぶりです。
岩田
では、早速始めたいと思います。
まず最初に、『モンスターハンター3(トライ)G』の
「G」とか「G級」という言葉なんですが、
『モンスターハンター』特有のネーミングですよね。
今回はそこからお話を訊かせてもらおうかなと。
この言葉になじみがない方もいらっしゃると思いますので。
辻本
そうですね。この「G」というシリーズは、
もともとは初代の『モンスターハンター』(※1)を
遊びこんでくれたお客さんに対して、
つくり手からの感謝の気持ちと挑戦の意味を込めて、
つくったものだったんです。
「G」というネーミングは藤岡の発案なんですが、
スタッフの心意気を表しつつ、声に出してみたときに
語感がドンとくる言葉を探していたんです。
岩田
勢いもありますよね。
辻本
はい。それと「G」って
「GREAT」とか「GUTS」とか、
元気が出る語句の頭によく付く文字なので、
それも決め手のひとつになってます。
岩田
ただ一般的に、グレードアップ版というのは
すべてがポジティブに語られるとは限らないですよね。
それに対して『モンスターハンター』の「G」は、
非常にポジティブに語られている印象があります。
そこにはスタッフの特別な想いや熱量に、
やっぱりポイントがあるんでしょうね。
藤岡
ええ、僕たちはそう思っています。
「G」のつくりかたというのは、
数字だけのナンバリング作品、
我々は「無印」って呼んでいるんですが、
その「無印」で吐ききった息を、
もうひと息、グッと絞り出すような感じなんです。
だからそこに、より濃密なものが
出てきているんだと思います。
岩田
そういう意味では、いわゆる「無印」は、
新しい土台や骨格づくりといったところに、
いったん全エネルギーを集中して
吐き出しきってるわけですよね。
藤岡
はい。その時点では紛れもなく
すべて出し切っているんですが、
商品を出した後に
お客さんが遊んでいる様子を見たり、
自分たちでやりこんでいくと、
もっといろんなことがしたくなるんです(笑)。
岩田
はい。
藤岡
ただ、それを次の新作でやれるかというと、
更地に土台をつくるところから始めるわけで、
そこに発展型のアイデアを
活かしにくい側面があるんです。
岩田
当然、時間的な制約もありますからね。
藤岡
ですから、既存の土台のうえに
さらにそれと同じくらいのエネルギーを
注ぐというつくりかたが、「G」ならではの
特殊な個性を生み出しているんだと思います。
岩田
その一方で、今回の「G」は
ニンテンドー3DSという新ハードでつくられる
初めての「G」になりますよね。
いままでは、勝手知ったるハードのうえで、
「無印」の骨格をベースにして
もうひと息エネルギーを絞り出していたところに、
今回は新しいハードという要素が加わって、
別の苦労やチャレンジがあったんじゃないですか?
辻本
そうですね。
この開発がスタートした段階で掲げたのは、
まず、ニンテンドー3DSに最適化した
『3(トライ)』(※2)をつくることでした。
ただ、もちろん『3(トライ)』を
移植するだけではおもしろくないので、
プラス最大限で自分たちが入れたい要素を
開発過程のハードルとして、設定したんです。
いつまでにこれができたら、こう進めよう、
それができたら、これも何とかなるんじゃないか?
っていう感じで、ずーっと開発を詰めていきました。
藤岡
立ち上がったばかりの
初めてさわる未知のハードでしたし、
ハードの研究をしながら
同時に開発も走らせる感じでした。
岩田
新ハードのポテンシャルを引き出すには、
最初の段階ではどうしても
研究と試行錯誤がありますからね。
藤岡
そうです。ただそれが今回、
思いのほか開発がうまく進んで、
スタッフの間でも
「これはこのまま全部やり切れるんじゃないか?」って
ムードになってきたんです。
岩田
「もっと行ける、まだまだ行けるぞ・・・」
っていう感じでしょうか。
藤岡
ええ、本当に、そんな感じでした(笑)。
それで一度、ほぼ組み込み終わった段階で、
社内で見せたんですね。そしたら、
「これはもう・・・“G”じゃないか!?」
って言われて。
岩田
はい(笑)。
藤岡
それで、正式に
『3(トライ)G』のタイトル名で
いくことになりました。
岩田
今回のカプコンの開発のみなさんは、
開発の過程でチームの勢いが加速していって、
それを維持したまま、
一気に終盤に流れ込んだ感じがします。
辻本
今回、ガノトトス(※3)っていう、
絶対入れたかったモンスターがいたんですが、
今年の頭の段階では
まだどうなるかわからなかったんです。
それが、後半一気にチームがのってきて、
最終的に入れ込めました。
藤岡
そういう意味では、
今回も任天堂さんの技術スタッフの方々に、
とても密にサポートや相談にのっていただいて
開発を進められたのが非常に大きかったと思います。
岩田
いや、うちの技術陣からは、
「カプコンさんではこんなことができるらしいから、
逆にどうやっているのか教えてもらおう」
っていう話を聞いてましたよ(笑)。
藤岡
そうなんですか(笑)。
でも、「ちょっと無茶かなぁ」っていう提案にも、
丁寧な検証とアドバイスをいただいて、
とてもありがたかったです。
岩田
カプコンさんとはニンテンドーDSのときから、
『モンスターハンター』の可能性を
探っていただいていたんですよね。
その流れで、今回ニンテンドー3DSも
提案させていただいたのですが、
お2人から見て、第一印象はいかがでしたか?
藤岡
最初にプレゼンで見せてもらったとき、
すごい衝撃を受けましたね。
裸眼立体視のような、
ある意味、近未来的なテクノロジーが
一般の家庭に降りる瞬間を
実際にこの目で見られるということに、
とてもワクワクしました。
辻本
僕はまず、任天堂さんらしい
キャッチーなハードだなぁ、と感じました。
プレゼンもまずハードの説明から入るんじゃなくて、
キャッチコピーから入って、
コンセプトを語られたんですね。
僕自身もそういったモノのつくりかたが好きなので、
とても共感しながら、見させてもらいました。
プレゼンも遊び心があって、とても印象的でした。
藤岡
おもしろかったですよね、プレゼン自体も。
ハードをなかなか見せてくれなくて・・・(笑)。
岩田
プレゼンもエンターテインメント、っていうことで(笑)。
辻本・藤岡
(笑)
岩田
そのうえで、じゃあ『モンスターハンター』は
どうなるか、と。
藤岡
じつは僕自身、
『モンスターハンター』と3D映像は
相性がとてもいいだろうなぁって、
ずっと思っていたんです。
岩田
たしかに、あの世界の空気感や
臨場感を表すのに、
立体視はとても効果的ですよね。
藤岡
はい。箱庭的な、広大なフィールドで、
モンスターや自分がそこに存在するように
実感できる画づくりをしているので、
立体視で奥行きと広がりが加わることは
願ってもない要素だったんです。
その世界を歩くだけで
ワクワクする楽しさがありそうだなって
思っていました。
岩田
わかります(笑)。
開発の途中、モンスターが3Dで
動き始めたのを見たとき、
すごく嬉しくなかったですか?
藤岡
嬉しかったですねぇ・・・。
「そこに、ラギアクルス(※4)がいるよ!」って(笑)。
いつも見ていたモンスターでも、
立体視で動き出したときの興奮というか、
臨場感はとても新鮮で。
ぜひお客さんにも早く体験してもらいたいですね。