岩田
さて、杉山さんにとって、
今回の『スティールダイバー』の企画は
かなり長いテーマになりましたね。
杉山
はい。2004年のE3(※5)で
初めてニンテンドーDSを出展しましたが、
そのときにテクニカルデモとして出したのが
そもそものはじまりでした。
岩田
あのときのわたしの印象では、
体験してくださった方々から、とても評判がよくて、
「あれ、遊べましたよ」という声もけっこうあったんですけど、
すぐに陽の目を見るようなこともなく、
そのあと杉山さんは『Wii Fit』(※6)などの開発で
忙しくなってしまったんですよね。
杉山
そうです。
岩田
いつ頃から、「これ、仕上げへんの?」と、
プレッシャーがかかるようになったんですか?
杉山
E3からだいぶ時間が経って、
NOA(Nintendo of America)から
「DSiで出してほしい」という話がありまして・・・。
宮本
え?そうだったっけ?
杉山
そうです(キッパリ)。
宮本
僕、杉山さんの顔を見るたびに、
「あれを仕上げるのは、杉山さんの仕事やからね」と
言ってきたんです。
杉山
そう、そうでした・・・(笑)。
宮本
「あ、そういえば、あれはどうなってんの?」
「あれはいつかは仕上げるんやろ?」
「どうすんのよ、あれ?」って、
しつこく言い続けていて。
岩田
杉山さん、宮本さんに会うたびに言われてたんですね(笑)。
杉山
はい。言われてました(笑)。
宮本
で、NOAの人たちも
「あれは面白かった」と言ってくれるし、
ジャイルズさんのチームがちょうど空いたので、
杉山さんに「いっしょにつくったら?」と言ったんです。
岩田
宮本さん、どうしてジャイルズさんたちといっしょに
今回の『スティールダイバー』をつくろうと思ったんですか?
宮本
ひとことで言うと、
このテーマは彼らに合っているような気がしたんです。
先ほどの話にも出ましたけど、
昔からいっしょに仕事をしてきましたし、
彼の力は十分わかっていますから。
それと会社のヴィテイも京都で・・・。
今村
会社が近くにあったので、僕がジャイルズさんの会社に
毎日のように通うことができたんです。
ジャイルズ
毎日、今村さんがうちの会社に来てくれるのは、
僕たちにとって、すごくよかったんです。
ちょっとの相談でもすぐにできるし、
細かい操作性を毎日のように修正できたり、
開発をスムーズに進めることができました。
岩田
ジャイルズさんが京都にいたというのは、
開発を進めるのに大きなメリットだったんですね。
今村
そうですね。
ジャイルズ
それに、僕が情開(情報開発本部)に入ったときと
やり方が同じだったので、
情開でつくっていたときと同じような感覚を、
久しぶりに感じることができました。
岩田
今回は何人のチームでつくったんですか?
ジャイルズ
ヴィテイのスタッフは11人です。
今村
今回は、ヴィテイさんと情開の
ミックスのプロジェクトでした。
一時的に情開がヴィテイさんに
拡大したような感じで開発が進められました。
最初はモードが1個しかないということもあって、
DSi用につくっていたんです。
ジャイルズ
そうですね。
最初はダウンロードできるDSiウェア(※7)でした。
杉山
そうやってDSiウェアでつくりはじめたものの、
「これは育ちそうだ」ということで
DSのパッケージソフトでつくることにして、
そのために、ほかのモードをいくつか付けようと考えました。
先日の「社長が訊く」でもお話に出ていた、
『レーダーミッション』(※8)のリベンジとかがそうですね。
岩田
かつて宮本さんがつくった
ゲームボーイソフトを今回、
リベンジしたいという話でしたよね。
宮本
そうです。
そこで、大きな展開にするためには
ディレクターが必要だということになって、
今村さんに頼むことにしたんです。
岩田
今村さんは、DSのパッケージソフトを出そうとなってから、
巻き込まれたということなんですね。
今村
そうです。でも実は・・・
宮本さんは覚えていないかもしれませんけど、
『スターフォックス コマンド』(※9)を立ち上げる前に、
宮本さんから「潜水艦、やってくれないか?」
と言われたことがあったんです。
宮本
そうだったっけ?
今村
はい。で、そのときは、杉山さんたちがつくった
テクニカルデモのロムを借りて、ずっと研究していました。
岩田
ああ、そういう時代のテーマなんですか。
『スターフォックス コマンド』が出たのは2006年でしたから、
それこそ2004年のE3のあとに
本格的に開発しようという動きもあったんですね。
今村
そうなんです。でも、話し合ってるうちに、
「やっぱりテーマがちょっと地味やし、
これをパッケージで売るのはキツイよね」ということで、
お流れになったんです。
ところが、今回、突然「潜水艦を・・・」と言われて、
「あ、また来た!」みたいな感じでした。
岩田
「帰ってきた潜水艦」ですか(笑)。
今村
ええ、しかも、いきなり急浮上してきました(笑)。
宮本
それはやっぱり、
僕の頭のなかのイメージにあったんでしょうね。
「潜水艦をつくるなら今村さんや」って(笑)。
今村
えー・・・それはたぶん、
僕がこれまで“乗り物系”ばっかりつくってきたので、
そういうイメージが宮本さんの頭のなかに
でき上がっているんじゃないですか?
岩田
あははは(笑)。
確かに今村さんは
『F-ZERO』(※10)でクルマを走らせ、
『スターフォックス』では戦闘機を飛ばしましたからね。
今村
で、今回は潜水艦なので、陸海空と(笑)。
岩田
おお、すごい! 陸海空を完全制覇じゃないですか(笑)。
一同
(笑)
今村
そうなんですよ(笑)。
それでDSのパッケージソフトとしてつくることにして、
もともとあった「潜水艦モード」のステージを増やしたり、
宮本さんのリベンジである「海戦モード」や、
さらに「潜望鏡モード」などをつくって足していきました。
岩田
その結果、3つのモードになったんですね。
今村
はい。
宮本
3つのモードは全部違うんです。
岩田
潜水艦がテーマだということ以外は、
全部違うゲームと言ってもいいくらいなんですか?
今村
そうですね。ただ、「潜水艦モード」のなかに、
ボーナスゲームで潜望鏡の遊びが入ってますし、
「海戦モード」でも、バトルは「潜望鏡モード」になるんです。
なので、潜望鏡くくりではあるんですけど、
遊びをいろいろとミックスしたものになっています。